2012/09/26
平成24年第3回定例会一般質疑 質疑・答弁全文
【小林ひとし質疑】
お許しをいただきまして、通告に従い区長並びに関係部長に一般質問をいたします。
さて、最近の国政の状況は、民主党では代表選、自民党では総裁選が行われ、政治への注目度が若干高まっておりますが、小泉政権以降は毎年総理大臣が変わり、相変わらず政治の停滞、国民不在の政治が続いております。こうした中、先月「社会保障と税の一体改革」では民主、自民、公明の3党で合意したことは決定できる政治という観点からはある意味評価できます。しかし実際に決めたことと言えば、消費税率を引き上げだけで、肝心な社会保障の部分についてはこれからというお粗末な内容でした。また、わが国の財政は国と地方の債務残高が1千兆円を超えているにも関わらず、本年度の一般会計予算の90兆円のうち半分近くの44兆円も国債で賄うという異常な状態が続いております。そして、さらに今年度の赤字国債を発行するための法案がいまだ成立するメドが立っていないというのはどういうことなのでしょうか。責任の所在は政権政党である民主党は当然ですが、国会に議席を有する既存政党にあることは言うまでもありませんが、いまわが国はまさに「決められない政治」が続いております。
こうして国政が「決められない政治」の状況下で、大阪では「大阪から日本を変える」をキャッチフレーズに次から次へと改革が行われ、まさに国政とは正反対の状況です。当初はいくつもの法律改正が必要で不可能とさえ言われていた大阪都構想は先月関連法案が成立し、着実に実現に向け進んでおります。教育に限っても、今年の3月末に大阪府で、そして5月末に大阪市でそれぞれ教育行政基本条例が成立し、形骸化した教育委員会制度は存続するものの、最終的に首長が責任を負う教育の政治主導が実現しました。主な内容はご承知の通り、首長が教育委員会と協議して教育目標を定めるというものですが、教育員会が反対しても、反対意見を付して議会に提出でき、最終的には議会の議決で決まるというものです。加えて、首長は教育委員の罷免を議会に提案する必要があるかどうか判断できるようになりました。さらに大阪市では学校活性化条例も成立し、先般開始した校長の公募には定員50名のところ、1282人の応募があったと聞き及んでおります。橋下氏が市長に就任して1年もたたないうちに次から次へと改革ができるのは、やはり本当に行政のトップにやる気があるかないかの一言に尽きると思います。
さて、まず初めに生活保護の次世代育成支援プログラムの塾代助成、教育クーポンについてお伺いします。そもそも我々が生活する資本主義社会は端的に言えば、資本家に富が集まり、自身の能力によって賃金が決まり、誰でもできる単純労働は低賃金の社会です。グローバル経済の中で今後ますます労働力のフラット化が進み、こうした傾向が強まってくるのはもはや時間の問題です。私はこのような資本主義社会の宿命でもある格差が拡大し、負の連鎖が続く社会で、せめて人生のスタートラインだけはどの子どもも平等であるべきであると考えております。そうした意味で教育は誰でも希望すれば皆同じ環境で受けられるように社会として制度を整えていかねばならないと思います。一部のデータではありますが、やはり収入の多い家庭で育った子どもの方がそうでない子どもと比べて学力が高い傾向にあるという結果も出ております。そしてこの平等に教育を受ける権利を着実に実践しているのが現大阪市長の橋下徹氏です。橋下氏は府知事時代に私立高校の無償化を決め、一定の所得制限はありますが、平成23年度の新入生から実施しております。経済的な壁が取り除かれた結果、多くの生徒が公立・私立(わたくしりつ)を問わず選択の幅が広がり、大阪府民の誰もが自ら希望するどの高校にでも試験にさえ合格すれば進学できるようになったことは素晴らしいことです。こうした取り組みもゆくゆくは東京、そして日本全国に広めていきたいと私は考えております。そしてまた、今月からは大阪市の西成区で教育クーポン事業がスタートしました。これはまだ試行段階ですが、就学援助世帯に月1万の教育クーポンを支給し、塾や習い事の費用に充てることができるものです。皆様もご存じのとおり東京都でも生活保護の次世代育成支援プログラムで塾代が助成される制度がありますが、塾に限定され、しかも生活保護制度のプログラム故、当然のことながら生活保護世帯に限定されております。そこでお伺いいたします。
①次世代プログラムで中学1~3年生に塾代助成を行っているが、現在の利用率について伺う。
②平成21年9月から塾代助成を行ってから全日制高校の進学率が増えたと聞くが、平成21年~23年度の対象者の進学率の推移について伺う。
③次世代プログラムの塾代助成は積極的に活用すべきと考えるが、利用率が低いと聞く。利用率を高める方策を考えているのか。
④次世代プログラムは東京都の事業で補助率が10分の10で、また小学校4~6年も対象に入っていると聞くが、本区において対象としない理由を伺う。
⑤次世代プログラムの塾代助成は現在中学3年生で月額12500円、1・2年生で8300円を上限に支給しており、東京都の補助金の範囲内で行っている。一般的な塾代の平均支出は2万円を超えているというデータもあり、区の一般財源を使ってある程度増額すべきと思うがいかがか。
⑥大阪市では橋下徹市長指示の下、今月から西成区で就学援助世帯を対象に月1万円の教育クーポン支給を開始し、今後は全市域で実施する予定である。本区においては生活保護世帯には次世代育成支援プログラムで塾代助成が行われているが、就学援助世帯に対しても教育クーポン等の形で塾代助成を実施すべきと思うが、区長の考えを伺う。
次に教員の勤務評価制度についてお伺いします。教育で一番重要なのは、言うまでもなく学校の教員です。どんな素晴らしい校舎でも、どんなにすばらしい教科書を使っていても、どんなに素晴らしいカリキュラムでも、教育の質を決定づける最も重要な要因は教員の質であります。恐らく保護者の多くが、自分の子どもがどの教員に教わるのか、というところに関心の多くが注がれます。中には初めから公教育をあきらめ、さっさと有名な進学塾に通わせ、有名私立中学・高校に進学させたがる親もいるのは事実です。私自身は有名な進学塾に通うこともなく、普通に葛飾区立の小・中学校に通いましたが、比較的学校の教員には恵まれておりました。最近でも議員として区内の小・中学校の校長・教員に接する機会が多いですが、私の知っている教員のほとんどは、今でこそ熱血漢あふれる金八先生のような方はおりませんが、熱心に子ども達の指導を行い、時間を惜しんで勤務に励んでいることは承知しております。しかしながら、ごく稀に保護者からも疎まれる不適格な教員がいるのも事実です。大多数の優秀な教員のことを考えると躊躇しますが、私は教員は必ずしも身分が保証されるものではなく、不適格教員については転職を薦める、分限免職にすることこそが教員全体の質の向上に繋がると思っております。そのためにはしっかりと教員の勤務評価を行い、個別評価以外の情報はなるべく公開することが重要と考えます。大阪府では先般保護者や生徒に授業アンケートの結果を教員評価に反映させることを決め、また新たに保護者に不適格教員排除の申し立て権を与える新たな仕組みもスタートします。本区における教育の権限は大阪府や政令指定都市である大阪市とは大いに異なり、直接比較対象することができないことは十分承知しております。しかしながら「これは都教委の権限」であるとか、「こちらは区教委の権限」とか言っているようでは大阪のようなダイナミックな改革はできません。これもまた教育委員会制度と同様に責任の所在が不明確で、いずれかの時期に東京都から教員の人事権の移管など制度自体を見直す必要があると思いますが、いずれにせよ、現在教員の勤務評価は、指針は東京都から示されているものの、本区の教育委員会に委ねられております。そこでお伺いします。
①東京都教育委員会は、教員の勤務評価委について5~1の相対評価を行っており、それぞれの比率を提示しているとのことだが、その比率を伺う。
②昨年度の本区の区立小・中学校に勤務する教員の勤務評価5~1のそれぞれの人数を伺う。また2年連続評価1の教員は何人いるのか。
③現在の教員の勤務評価では保護者の意見が反映されていないが、アンケートを取るなとして校長等の管理職が評価する際に反映させるべきと思うがいかがか。
④本区の区立学校に勤務する教員で、過去5年間(平成19~23年度)で指導力不足等教員に認定された教員はそれぞれ何人いたのか。またそのうち分限免職になった事例は何件あるか。
最後に生活保護制度についてお伺いします。生活保護制度は高齢で働けない者や障がい者、母子家庭など社会全体で支えなければならない最後のセーフティーネットで必要不可欠な制度であることは言うまでもありません。しかしながら、もともと自立を目指した制度ではないため、働ける状況になった者にとっては、働けば働いただけ支給が減らされるという受給者からすれば働く意欲をそぐジレンマを抱えた制度で、一旦受給するとなかなか抜け出せないと言われており、見直しが求められております。わが国の生活保護費はリーマンショック後から急激に増加し、本区においても同様です。生活保護費は、現在わが国全体では3兆7千億円というかつてない規模に膨れ上がり、今後は高齢化社会の中で無年金者の増加等で生活保護費の増大が予想されます。また一部の年金受給者よりも生活保護者の方が支給額が多いという不公平もまかり通っております。これを放置しておくことは、長年コツコツと年金保険料を払ってきた方はもちろん、今現在年金保険料を負担している若者に支払う意欲を失いかねない重大な問題をはらんでいることを認識しなければなりません。これは一義的には国の責任でありますが、今の民主党政権では到底解決できません。この不公平な状況を変えない限りは年金保険料を払わないで、将来お金がなくなったら生活保護という人が多くなり、わが国の社会保障制度そのものの崩壊につながりかねません。こうした状況の中で、昨今無視できないのが社会問題にもなっている生活保護の不正受給です。生活保護制度そのものが国の制度であるため、本区でできることには限界があるのは十分承知しておりますが、それでもできることはしっかりと行っていかねばなりません。当然のことながら不正受給に対しては断固たる措置で臨み、万全のチェック態勢で臨むことを強く要請します。そこでお伺いします。
①本区における現時点での生活保護受給者の総数、また平成23年度から国は生活保護受給者の年齢を18段階に分類したデータの提出を求めるようになったが、その内訳を伺う。また、日本国籍以外の受給者数、支給総額を伺う。
②昨年度の保護廃止の件数と主な理由(死亡、収入増、失踪など)とその割合を伺う。
③過去5年間(平成19年度~24年度現在)の不正受給の件数と被害額の総額(年度ごと)を伺う。
④過去5年間の不正受給の未収金の件数と総額を伺う。
⑤過去5年間で2回以上不正受給を切り返した者は何人いるのか。
⑥昨今、生活保護の不正受給が社会問題となっており、不正受給に対しては刑事告訴を含めて厳しい対応をすべきである。本区は現在どのようなチェック体制で、今後どのような姿勢で臨むのか。
以上で、私の質疑を終了します。ご清聴ありがとうございました。
【区 長】
小林議員のご質問にお答えいたします。まず、生活保護の次世代育成支援プログラムについてのご質問にお答えいたします。
はじめに、次世代育成支援プログラムの塾代助成の利用率ですが、本年8月末現在、中学1年生が28.9%、中学2年生が22.2%、中学3年生が47.2%でございます。
次に、塾代助成を開始してからの対象者の高校進学率の推移についてですが、平成21年度が85.6%、平成22年度が87.3%、平成23年度が91.8%でございます。
次に、塾代助成の利用率を高めるための方策についてですが、今年度、東西生活課において、高校進学を勧めるしおりを作成いたしました。現在、このしおりを活用しながら、ケースワーカーが保護者に対して子どもが進学することによって就労の機会が広がることを粘り強く説明するとともに、当事者である子どもに対しても中学卒業後の進路をしっかりと考えてもらうように働きかけております。こうした取り組みを進めていくことにより、通塾の必要性が理解され、塾代助成の利用率が高まっていくものと考えております。
次に、塾代助成の小学生への対象拡大についてですが、現状では小学生の学習塾の利用が一般的とまで言える状況にございません。また、この事業が東京都の補助金を活用して実施している事業であり、就労支援など他の自立支援事業にも活用していること、さらに昨年度から中学の全学年に拡大したという経過があるため、当面は中学生の通塾率の向上に力を注いでいきたいと考えております。
次に、塾代助成について、区の一般財源を使って増額すべきとのご質問にお答えします。塾代助成の利用が伸びない理由は、塾代助成の額が低く家計を圧迫するからというようなことではなく、保護者をはじめ当事者の子ども自身、高校進学に対して関心の低い方が多いということが主な理由でございます。ご承知のとおり、年々生活保護受給者は増え続け、生活保護給付費の4分の1は区が一般財源で負担しております。統計データのある全国の通塾率で見ると、中学3年生で6割台にとどまっておりまして、こうした中で塾代助成に一般財源をさらに上乗せして実施することは生活保護を受けていない方との均衡を失することになりかねないため、塾代助成を増額することは考えておりません。
次に、生活保護の不正受給防止のためのチェック体制と今後の取り組みについてのご質問にお答えいたします。まず、保護の開始にあたっては、生活保護受給者に生活保護受給にあたって注意すべき事項等を記載した「保護のしおり」を配布し、収入があった場合には申告することなどを説明するとともに、金融機関等への資産調査を行っております。保護開始後は、就労可能と判断される方には毎月収入申告を求め、就労困難と判断される方には少なくても年1回の収入申告を求めております。その一方で、毎年課税調査を行い収入状況を確認するとともに、60歳、65歳到達時には年金受給権の調査を行い年金受給権の有無や実際に受け取る年金額を把握しております。不正受給防止のため、こうした取り組みを徹底するとともに、悪質な事案に対しては、今後とも、警察への告訴含め厳正に対処してまいります。
なお、その他のご質問につきましては、教育長及び所管部長より答弁いたさせます。
【教育長】
教員の勤務評価のご質問にお答えいたします。初めに、教員の勤務評価に係る相対評価の比率についてお答いたします。教員の業績評価につきましては、教員の資質能力の向上と学校組織の活性化を目的とし、「東京都区市町村立学校教育職員の人事考課に関する規則」に基づき、毎年実施しているものでございます。 第一次評価を学校長が絶対評価で行い、最終評価を教育長が相対評価で行っております。ご質問にあります相対評価の分布率につきましては、東京都教育長が定めることになっており、現在のところ、東京都教育委員会では公表していない状況でございます。
次に、昨年度の本区教員の勤務評価5~1のそれぞれの人数などについてお答えいたします。最上位の5につきましては120名、上位の4は249名、中位の3は620名、下位の2は253名、最下位の1は該当者なしでございます。また、2年連続で1の評価の教員はおりません。
次に、教員の勤務評価に反映させるアンケートについてのご質問にお答えいたします。今のところ、直接、教員の評価に反映させるアンケートは実施しておりませんが、教育委員会としては、年1回、全校の保護者を対象に、学校教育に関するアンケートを行っております。このアンケートは、学習内容が分かりやすく、楽しい授業をしているか、保護者にとって連絡や相談がしやすく、それらに適切に対応しているなどを聞くものとなっております。また、各学校では、授業公開や学校行事の際に、保護者のアンケートを取っており、そのアンケートの中には、教員の指導についての意見や感想も記入されています。教員の評価は、これらのアンケートも参考にしながら、校長が総合的に判断して行っているものであります。教育委員会といたしましては、今後もさまざまなアンケートを参考としながら、適正な教員の評価を行ってまいりたいと考えております。
次に、過去5年間で指導力不足等教員に認定された教員数などのご質問にお答えいたします。現在、東京都教育委員会では、指導力不足等により児童・生徒に対する指導が不適切であると認定された教員に対して、1年以内の期間で指導改善研修を実施し、現状の問題点や課題を見出し、当該教員の能力、適性等に応じて、指導力の改善を図っているところでございます。本区の状況でございますが、これまで指導力不足等として認定された教員はおりません。また、分限免職になった事例もございません。
【教育次長】
就学援助世帯に対して、教育クーポン等の形で塾代助成を実施すべきとのご質問にお答えします。お話にありましたとおり、本区では既に生活保護世帯を対象に塾代を助成しているところでございます。塾代助成を就学援助世帯に拡大するためには、多額の財政支出が必要になります。大阪市の事例は、まだ試行段階であるとのことですので、今後の実施状況や成果などを見ながら、様々な角度から研究してまいりたいと考えております。
【福祉部長】
次に、生活保護についてのご質問にお答えいたします。まず、生活保護受給者の総数でございますが、本年7月の生活保護受給者総数は、12,543人でございます。
次に、生活保護受給者の年齢を18段階に分類した内訳でございますが、本年7月の内訳は、0歳が56人、1歳2歳が115人、3歳から5歳までが167人、6歳から8歳が218人、9歳から11歳が254人、12歳から14歳が320人、15歳から17歳が338人、18歳19歳が111人、20歳から29歳が339人、30歳から39歳が768人、40歳が134人、41歳から49歳が1,217人、50歳から59歳が1,589人、60歳から64歳が1,583人、65歳から69歳が1,510人、70歳から74歳が1,495人、75歳から79歳が1,178人、80歳以上が1,151人となっております。
次に、日本国籍以外の受給者数についてお答えいたします。生活保護法では、世帯単位に扶助を行っているため、日本国籍と日本国籍以外の受給者とを分けて集計してはおりません。このため、世帯主が日本国籍以外の方の世帯に属する受給者の数をお答えしますと、本年7月の受給者数は526人です。また世帯主が日本国籍以外の方の世帯に属する受給者に対する支給総額は、6444万3429円となっております。
次に、昨年度の保護廃止の件数と主な理由とその割合でございますが、廃止件数は1039件でございます。廃止の主な理由とその割合ですが、死亡によるものが40.8%、失踪したことによるものが18.8%、就労収入の増加によるものが11.4%、区外に転出したことによるものが5.9%となっております。
次に不正受給に関するご質問についてお答えいたします。まず、過去5年間の不正受給の件数と被害額の総額でございますが、平成19年度は22件で4026万9800円、平成20年度は22件で4161万2479円、平成21年度は30件で4756万9993円、平成22年度は26件で4658万2445円、平成23年度は29件で3671万3021円でございます。平成24年度は現時点で20件、2971万5328円でございます。
次に過去5年間の不正受給の未収金の件数と総額でございます。平成19年度は21件で3830万1749円、平成20年度は21件で4008万3031円、平成21年度は11件で4173万8058円、平成22年度は23件で3957万2029円、平成23年度は29件で3623万5021円となっております。
次に平成19年度から23年度までの過去5年間で2回以上不正受給を繰り返した者の数につきましては、3人でございます。